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【ゆめのたね × SDGs】ミリオンハートプロジェクトによるAED設置支援

2024年3月30日


アートの力で、不足地域にAEDを寄贈するプロジェクト

AED(自動体外式除細動器)とは、心停止の人を救命する医療機器のこと。あなたも、公共施設や商業施設などで設置されているAEDを見たことはあるのではないでしょうか。

2023年9月、チャーミングでハートフルなデザインが印象的なボックス入りAEDが、大阪府大阪市の淡路にあるみき鍼灸整骨院さんに寄贈されました。実はこのAEDは「ミリオンハートプロジェクト」により、およそ2年間かけて集められたチャリティ支援金から寄贈されたものです。

この「ミリオンハートプロジェクト」とは、画家の橘ナオキさんと額装作家の多喜博子さん2人が運営するアーティストユニット「ハルキハウス」独自のチャリティ活動です。

取り組みは至ってシンプル。橘ナオキさんが描くハート画を一般の方が購入。その売上の90%をAED購入費用(ボックス、5年間の消耗品含む)に割り当て、世の中に普及させていていこうというプロジェクトです。その第一弾として、設置が不十分な地域でもある大阪市 淡路の町に、約90万円分の「ハート」の応援購入費によってAEDが寄贈されました。


 
※AEDの設置と地域住民を招いて応急救護講習の様子(株式会社エスクリエイト様)


ここで、話は36年前に遡ります。私が小学生の頃、仲の良かった同級生のHくん。登校中にに突然心臓発作で倒れたのです。救急車を待つ間、近隣の方による心臓マッサージが処置されたものの、残念ながらHくんは帰らぬ人となりました。現場から小学校までは目の前。でも当時はAEDが設置されているはずもありません。今でも、救急車が来るまで横たわったHくんをただ呆然と見ることしかできなかった時間を昨日のように感じます。

もし私たちが何かの理由で「心停止」した場合の生存確率は、救急車を待つだけでは8.2%、心臓マッサージをした場合は12.2%だそうです。ただしAEDを併用した場合は53.2%もの人が助かっています。(総務省消防庁 令和3年版消防白書より)

つまり、AEDを使って適切な処置をすればより多くの命を救うことができるわけです。

重要なのは現場からの距離。心停止が発生してから片道1分(往復2分)以内に取りに行けるところが、AEDの適正配置距離なのだそうです。だとすると、過疎地はもとより人口密集率が高い都市部だとしても、AEDまでのアクセスが悪い地域がまだまだある、これが実情なのです。



ハート(良心)が広がることでハート(心臓)を守れる街に

「ミリオンハートプロジェクト」が人気の理由は、チャリティ購入をする一人一人が楽しくアート作品に触れることができる点にもあります。

金色に輝くハート。静かに愛を囁くハート。漆黒の中で命の雄叫びをあげるハート・・・。

画家 橘ナオキさんが描くハートには1枚として同じ作品はありません。個性豊かなハートの作品たちから私たちは直感的に1枚を選ぶのです。作品を選択する瞬間に、自分の中に眠る誰かへの想い・願い・祈りが目の前に浮かび上がり、ハートの画に魂が吹き込まれます。

「ハートは人にある良心をあふれさせる形」橘さんはそう言います。一人一人が誰かを想いハートを購入することで、その良心の結晶として街にAEDが設置されていくのです。

つまり、作品選びを通じて購入者のハートに火が灯るプロセスもミリオンハートという大きなアート作品の一部といえます。ミリオンハートプロジェクトは、まさにアートとハートが贈与の循環を生み出す「社会参画型アートプロジェクト」なのです。


 ※多喜博子さんによるオリジナル額装を依頼することもできる。まさに世界で一つだけのハート作品。


2018年 ゆめのたね放送局でチャリティ展の開催がきっかけに

ミリオンハートプロジェクトが誕生したのは2018年。ゆめのたね放送局共同代表の岡田尚起さん・佐藤大輔さんから全国のパーソナリティー・リスナーの方々に向けて西日本豪雨災害の義援金募集の呼びかけがありました。ここでハルキハウスの2人はすぐに「ミリオンハートで被災地支援」に乗り出します。

ゆめのたね放送局大阪スタジオ内特設ギャラリーにてミリオンハートチャリティ展を企画開催。賛同したゆめのたね放送局のコミュニティ・リスナーなど沢山の方が購入され放送局を通じて義援金が届けられたのです。これまで橘ナオキさんが親しい方だけへ非売品として描いていたミリオンハートが、社会に向けて「ミリオンハートプロジェクト」として産声をあげた瞬間でした。

その後、橘ナオキさん・多喜博子さんは展覧会やハートを描くワークショップなどを積極的に展開していきます。(これまでのチャリティ先は、関西骨髄バンク推進協会、チャイルドケモハウス・日本赤十字台風19号災害義援金・国境なき医師団 など) そしてAED設置チャリティとしての第一弾が、前述の大阪の淡路へのAED寄贈です。現在は第二弾として広島県世羅町へのチャリティ受付が進行しています。

またミリオンハートプロジェクトは、ハルキハウスに賛同する方たちの力で更なる広がりも見せています。

・2024年2月 愛知県名古屋市にて、ゆめのたね放送局パーソナリティ(現在は休止中)小島恵さん主催で令和6年能登半島地震 災害義援金を募るチャリティ展が開催。

・2024年3月  大阪府堺市にて、宮崎香江さん主催で大阪府「子ども未来基金」支援を目的としたミリオンハートチャリティー&マルシェが開催。



※2021年開催 ハートフルで平和を打ち出した企画展として911枚のミリオンハートチャリティ展を開催した9.11展(ギャラリー&コミュニティスペース Chignitta)



※2022年開催 UMEDA MEETS HEART 2022 ハートモチーフのアートチャリティ展覧会 / ワークショップ (UMEDA MEETS HEART実行委員会梅田地区エリアマネジメント実践連絡会)



公私両面のパートナーである橘ナオキさん・多喜博子さんによる「世界をハートで溢れさせる」アーティスト活動は、ゆめのたね放送局のラジオ番組「才能を鍛える。」でもその真価が発揮されています。

「どんな人も優れた才能があり、その才能を開花させることが出来る」というポジティブな命題を掲げたこの番組。各業界における才気溢れるゲストを迎え、橘さん・多喜さんそれぞれの視点からゲストの才能の原石を探っていくトークが展開されます。

トークが熱を帯びるにつれて、人が才能を開花させるための本質的なエッセンスがゲストの言葉から浮かび上がってくるのです。そんな二人のパートナーシップを発揮した番組の魅力に、アート作品同様、多くのリスナーが惹きつけられているのです。



   ラジオ番組 才能を鍛える。(アート&フレーム・ハルキハウス presents)
   Instagram    額装作家 多喜博子  画家 橘 ナオキ



橘ナオキさんの作品は、主に動植物や龍といったモチーフから描かれていて、作品たちからは生命力に溢れたポジティブなメッセージが伝わってきます。(全国各地のゆめのたね放送局パーソナリティにもそのファンが多いことでも有名です。)

特徴的なのはそのファンの広がり。オーダー作品はもとより、様々な社寺仏閣への作品奉納を通じファンの広がりが地域の活性や災害復興の機運へと結びついています。

偶然お参りした先で作品に触れたお客様やラジオ番組リスナーが、続々と作品奉納された神社へと「聖地巡礼」へ・・・。そんな様子がSNSで度々投稿されて話題になっています。

また、学問・受験の神様として有名な菅原道真公が祀られている長尾天満宮(京都)では、作品奉納を契機にミュージシャンやダンサーをはじめとする有志メンバーによる悠久祭が行われるなど、アートが社寺仏閣にコモン(社会的共通資本)としての新たな命を吹き込み、地域コミュニティに確かな躍動を生み出しているのです。



【奉納】左上から順に右下へ
   長尾天満宮(京都)   2020年7月   壁画【悠久之歌】
   大成龍神社(広島)   2020年8月   絵画【雨龍水天戯画】
   北野天満宮(京都)   2020年12月 絵画【春来たる。】
   御幸森天神宮(大阪)2021年12月 大絵馬【双寅大輪舞曼荼羅】
   日浦山春神社(広島)2023年10月 絵画【雲外蒼天之龍】
   御幸森天神宮(大阪)2023年12月 大絵馬【新創世之龍】





選びとったハートの一枚が贈与の大きな渦へと変わる


今回ご紹介したように、ミリオンハートプロジェクトは私たちの日常が愛と喜びに溢れていることを再確認する素晴らしい機会を与えてくれます。そして同時に、私たちが自分の意志で社会に大きなハート(AEDなどのチャリティ)を贈り届ける「アンサングヒーロー(名もなき英雄)」側に回ることができるプロジェクトでもあるのです。


教育者・哲学者の近内悠太さんは著書「世界は贈与でできているーー資本主義の「すきま」を埋める倫理学」の中でこう述べています。

「贈与は受け取ることなく開始することはできない」そして同時に「贈与は、受取人がこの世界に出現した時に、初めて贈与になる」と。


既にこの世界が「ミリオンハート」で溢れている世界なのだとしたら、と想像してみます。もしそうなら、私たちがいつかどこかの誰かさんから贈られていたはずのハートに気づいて受け取ることができたその瞬間ーーー。
私たちもハートを贈る側になれる、ということなのかもしれません。


あの頃、登校中に倒れたHくんを前にただ立ち尽くすだけだった私も、ミリオンハートを「えいっ、これだ」と選んで受け取ってみることから、始めてみようと思います。

これからミリオンハートプロジェクトは、のびのびスクスクと(その名の通り100万枚のハートが溢れるまで)大きなハートの渦として広がっていくことでしょう。

そして、あなたもきっとお気に入りのハートに出会えるはずですよ。




  ミリオンハートプロジェクト   Instagram     オンラインストア  


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ミリオンハートプロジェクトが貢献するSDGsゴール

・ゴール1   貧困をなくそう
・ゴール3   すべての人に健康と福祉を
・ゴール10 人や国の不平等をなくそう
・ゴール11    住み続けられるまちづくりを
・ゴール16 平和と公正をすべての人に



執筆:幸田リョウ (ゆめのたね放送局アドバイザー/株式会社PARK STARS 代表取締役)


ゆめのたね放送局は、2015年6月の開局から8年で全国12スタジオに広がり、ラジオ番組企画・配信を活かした「人の夢を応援するコミュニティ」も広がりを見せています。この連載【ゆめのたね × SDG】では、コミュニティデザインを専門とする私 幸田リョウの視点を交え、各地に広がる社会貢献の活動をご紹介していきます。ゆめのたねパーソナリティの番組企画・貢献活動にますますご注目いただければ幸いです。