ラジオ放送局 ゆめのたね

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【ゆめのたね × SDGs】農業をメジャーにする男

2024年4月28日


自動車の街に広がる「春キャベツ」の畑

「最上級キャベツはるあかね、いつもならゴールデンウィークが収穫の山場なんだけどね・・・。暖冬とこの春の長雨の影響で今年はピークが1か月も早い。他の収穫期と重なってもう体がパンパンだよ。」

そう屈託なく笑い飛ばす彼の名は、髙木宏道さん(51歳 2024年5月現在)。

彼が事業運営している「ゆめのたねファーム」では、春キャベツを始め、カリフラワー、とうもろこし、ブロッコリーなど付加価値の高い野菜が人気です。地元のスーパーの店頭でもおなじみ。レストラン用の高級食材としても有名なのです。



愛知県豊田市と聞けば多くの人が「自動車の街」を思い浮かべるのではないでしょうか。その豊田市上郷地区で、早朝3時から農場で汗をかく髙木さん。2017年8月より「ゆめのたねファーム」を立ち上げ、広大な面積の農場を営み露地野菜を生産販売しています。

彼はそれまで某大手農業生産法人にて24年間勤務。役員も務めていました。その経験を活かし独立した彼は「稼げる農業」を掲げます。野菜市場における収益性の良い品種を中心に適地適作を実践。製品率を高める高付加価値型の農業を行っています。そこだけ聞くとなんだか農薬や化学肥料を大量に使う農場を想像しますが、ゆめのたねファームはむしろ逆。微生物を意識した土づくり、土地に適したタネ選びへのこだわり、野菜の生命力を引き出す栽培法にこだわることで、コストパフォーマンスを高めているんです。

そんな髙木さんには、もう一つの顔がありました。それは2024年6月で放送開始9年を迎える農業特化型ラジオ番組のパーソナリティとしての顔です。


農家とラジオパーソナリティの二刀流にこだわる
日本の農業従事者数は、2015年には175.7万人だったのが、2023年は116.4万人に。人口全体の減少率を大きく上回るハイペースで減っています。(参考:農業労働力に関する統計:農林水産省) 
円安物価高による農業資材・肥料等の高騰、気候変動への適応など農業にとってはますます不安定要素の増えている昨今。だからこそ農業従事者に何より必要なのは「経営力」「マーケティング力」です。髙木さんは早くからそこに注目していました。

「半農半X」や「週末農業」がブームだった9年前、「週8時間で年収100万円のミニ農業」をテーマにしたインターネットラジオ番組をゆめのたね放送局でスタート。実はその番組名が「ゆめのたねファーム」だったのです。その後、彼は一念発起し独立。番組名はそのまま屋号・農場名になり、今では地域で愛されるブランド名になりました。

ゆめのたねファームは、週末に地域のマルシェやイベントなどにも積極的に出店しています。真っ赤なシャツにトレードマークのオーバーオール。髙木さんは行く先々でお客様と楽しそうに会話を交わしています。同業者からは「農作業でフル稼働なのに、どうして店頭にまで立つの?身体が持たないよ」と言われるそうですが、髙木さんはむしろ喜んでいるようです。

その理由を聞くと、彼は言います。
「農家の常識は世間の非常識なんです。」



「農家はなかなか世間の声を聞く機会がない。自分の作った野菜たちを、お客様がどのような理由で購入されたり調理されるかを直に聞ける。これこそ、ものづくりしている人間にとって一番の喜びなんです。」

彼にとってはユーザーの生の声を聞くことこそが、今年〜来年に向けての世間のニーズを汲み取る市場調査にもなっているわけです。



毎週金曜に放送している彼のラジオ番組はこれから農業を志そうという若者にも人気。その季節、畑であった出来事のみならず、収穫計画、改善の取り組みを番組内で克明に伝えているからです。まさに農業経営者の頭の中をライブ中継!といった贅沢な内容です。
農業を志してIターン・Uターンを考えていたり、耕作放棄地を活かして農業で生計を立てられるようになりたい、そんな方にも目から鱗のような話が毎週聴ける。この番組が人気の理由です。

高齢化で野菜の需要全体が縮小している日本ですが、髙木さんは別の視点で語ります。「美味しいけど一般農家が作りにくい野菜こそ農家の成長分野なんです」と。

リスナーにとって「稼げる農業経営の最前線の話」を聞けるこの番組は、髙木さんにとっては「農業経営を振り返り戦略を練る貴重な時間」でもあります。1回の放送に向け毎回2時間、原稿作りに時間をかけて番組に望んでいるんだそうです。

ラジオ番組 ゆめのたねファーム


農家をメジャーに。農業で夢を叶える人を増やしたい。

髙木さんは農業分野の教育活動にも力を入れています。これまでも何度も農業就労志望者へ向けての講座を開催してきました。今後は、年間2千万円以上売り上げる農家を育成していくことが目標です。

そして彼の掲げる「稼げる農業」は、ラジオ番組の効果も相まって豊田市に広がっています。豊田市の地域資源を活かした市民体験型プログラム「とよたまちさと未来塾」では、ゆめのたねファームは農業体験を提供し市民の人気を博しています。地域の農・食と携わる機会が増えれば、それだけ地元の方にとって豊田市の魅力を再発見できると言うわけです。

またゆめのたねファームでは、年に1〜2回、市内の中学生を招いて農業職業体験を行なっています。タマネギ苗収穫、鶏糞散布、畝たて、草取り、土嚢作り、などなど。「農家の職業」をこれだけリアルに体験できる機会がある。中学生にとってなんて貴重なのでしょうか。


※とよたまちさと未来塾(左)、 中学生の農業職業体験(右上)、農業就労志望者への講座(右下)

「農業を開かれたかっこいい職業に。農業をメジャーにしていきたい。」
彼が農業経営者とラジオパーソナリティの二刀流を貫く理由はここにありました。

農業を志す人たちにとって「夢の種を撒く」髙木さんのゆめのたねファーム。「世界のトヨタ」のように、これからは海外のスーパーでゆめのたねファームの春キャベツを手にとる日も近いかもしれません。


(終わりに、放送局開局頃の裏話をご紹介します)

私もよく聞かれるのですが、ゆめのたね放送局と農場「ゆめのたねファーム」は経営上は全く別の独立した存在です。放送局の開局当初、髙木さんの番組名「ゆめのたねファーム」が自営の農場としてここまで展開するとはどのスタッフも想像していませんでした。

髙木さんが独立する際「ゆめのたねファームの名称を屋号で使ってOK です」と共同代表は快諾。今思えば、共同代表が髙木さんの農場で採れた甘さたっぷりのトウモロコシに餌付けされていたせいだったのかもしれません(笑) もちろん私も。

 ※現在「ゆめのたね」の名称は、あくまで放送局内事業のみに限定使用しています。




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ゆめのたねファームが貢献するSDGsゴール


・ゴール2   飢餓をゼロに
・ゴール4   質の高い教育をみんなに
・ゴール11    住み続けられるまちづくりを
・ゴール16 陸の豊かさを守ろう


執筆:幸田リョウ (ゆめのたね放送局アドバイザー/株式会社PARK STARS 代表取締役)


ゆめのたね放送局は、2015年6月の開局から8年で全国12スタジオに広がり、ラジオ番組企画・配信を活かした「人の夢を応援するコミュニティ」も広がりを見せています。この連載【ゆめのたね × SDG】では、コミュニティデザインを専門とする私 幸田リョウの視点を交え、各地に広がる社会貢献の活動をご紹介していきます。ゆめのたねパーソナリティの番組企画・貢献活動にますますご注目いただければ幸いです。