ラジオ放送局 ゆめのたね

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【ゆめのたね × SDGs】地球水族館から広がる瀬戸内海ビーチクリーン

2024年3月1日


瀬戸内海で最もゴミが漂着する浜から

海洋ごみへの問題意識の高まりと共に、日本各地でビーチクリーンに取り組む人が増えています。海洋ごみの中でも特に年間800万トンも流出すると言われる海洋プラスチックは地球規模の問題です。2050年にはプラスチックごみの量が魚の量を超えてしまうという推計もあるほど。プラスチックごみは、海の中の生態系に悪影響を与えます。そして私たちが食する海の幸にも蓄積していくことが懸念されています。


愛媛県伊方町にある御所ケ浜。ここは瀬戸内海で最もゴミが漂着する浜とも言われています。同県松山市から車を西へ3時間近く走らせ、ノコギリ型の日本一細長い佐田岬半島の中央部にその浜はあります。ここに毎月、四国各地から集まってくるその人たちは、ゆめのたね放送局愛媛スタジオ有志メンバーが立ち上げた「地球水族館」というプロジェクトで集まってきたボランティアの方たちです。

2022年5月から毎月開催されている伊方 御所ケ浜ビーチクリーン。私は17回目に初参加させていただきました。そこでの光景は目を見張るものでした。




御所ヶ浜は水も景色も息を飲むような美しい浜です。時に波は穏やかで透き通り、石が多いので波打ち際ではカラカラと綺麗な音が聴こえてきます。

しかし同時に、瀬戸内海、特に宇和海一帯の中で一番多く海洋ごみが漂着する砂浜でもあります。海流や地形の影響で流れ着く驚くほどの大量のプラスチック。家庭ゴミ、漁業ゴミ。時にはウミガメの亡骸まで・・・。ゴミの堆積層が「地層」になっている様子も見て取れます。

瀬戸内海の海洋ゴミ流入量は年間4500t。そのうち年1400tしか回収できていません。瀬戸内は内海(うちうみ)のため、未回収の海洋ゴミのほとんどが、瀬戸内海で沈殿・浮遊・一部は離島や海岸線の入江に漂着して年々積み重なっています。一般家庭や工業・漁業などで投機された海洋プラスチックごみ・マイクロプラスチックなども大量に漂着し続けます。

ここ御所ケ浜においては、「ビーチクリーン」と言ってもその内実は「ガチンコゴミ拾い」でした。地球水族館メンバーは、そんな大量の漂着ゴミを目にしても怯むことなく、むしろ笑顔でゴミ回収を行っています。地域の区長・町議の方々の協力も得て、開催するたびに県を跨いで参加する方も増えている、のだそうです。
ラジオでの出会いから、すぐさま伊方町 御所ケ浜へ

地球水族館プロジェクトは、愛媛スタジオのメンバー小山佳内子さんが中心となり、それまでも松山城ロープウェー商店街のロードクリーン、愛媛各地でのビーチクリーンなどを行っていました。ではこの伊方での「ガチンコ」ビーチクリーン活動は何をきっかけに始まったのか? 

実はゆめのたね放送局の地域応援ラジオ番組「せとふくラジオ ~繋がれ!海と森の守り人!~」に、岩田功次さんがゲスト出演されたことが大きなきっかけでした。「せとふくラジオ」は、愛媛・岡山・広島の3スタジオの有志メンバーが協力して不定期で放送している地域応援番組です。



岩田功次さんは一般社団法人E.Cオーシャンズの代表理事を務められ、数十年に渡り瀬戸内海の立入困難地域の海洋ごみの回収、調査を続けている「鬼ゴミ拾い」のプロフェッショナルの方です。2022年5月、せとふくラジオの取材で、地球水族館の中心メンバー小山佳内子さん・織田典子さんが、岩田功次さんと共に御所ヶ浜へ訪れフィールドワークを行いました。
 
その現場取材の衝撃冷めやらぬ同月すぐ、ふたりは伊方 御所ヶ浜ビーチクリーン第1回目をスタートさせました。何かに突き動かされるように。

そして、2022年7月の番組放送を通じて、愛媛スタジオのパーソナリティの方たちも、現実に立ち向かい海洋環境保全に長年取り組んできた岩田功次さんの情熱に影響を受けます。自分たちがラジオで伝えるその延長に、もっと岩田さんの活動を応援できることはないだろうか?と。

岩田さんを応援する気持ちを出発的にしつつも、自分たちの愛してきた海が自分たちが汚してしまっているかもしれない、そんな当事者意識がパーソナリティーの間に高まっていったのです。



環境保全の枠を超えて、地域の魅力をみんなで紡ぐ  
 
地球水族館の活動は、ビーチクリーンだけに留まりません。夢を応援するゆめのたね放送局のコミュニティ力を活かし、浜辺で拾い集めた漂着物などでビーチコーミング(※漂着物を加工・標本・装飾して楽しむ)の企画も開催。また岩田功次さんとのお話し会やドキュメンタリー番組上映会なども行われ、楽しみながら地球水族館の仲間の輪が広がりを見せています。

また大阪・門真市にあるゆめのたね放送局本局(大阪スタジオ)においても、地球水族館はの地域クリーンナップ活動が継続的に展開されています。さらに地球水族館にインスピレーションを受けて、日本各地のパーソナリティの間にも、自分たちのラジオ番組企画などから、楽しく自発的な環境保全の動きが広がっているようです。



「地方創生」が叫ばれて久しいですが、地域の魅力というのは、決して一過性の観光イベントだけで醸成できるものではありません。地域の人自身が暮らしている地域への誇り(シビックプライド)を持てることが、何よりの基盤になります。地球水族館の取り組みは、環境保全に取り組みながらも、まさにシビックプライドを育てる活動でもあると感じます。

また、SDGsのウェディングケーキモデルにおいて三層目にあたる「生物圏」は、私たちが地球上で暮らす上で「社会圏」や「経済圏」の土台となる最も重要な目標とされています。私たちの命を支えるのに必要不可欠な海や森林などの“環境問題”や“気候変動”を後回しにしては「社会圏」や「経済圏」の目標も達成出来ないからです。とはいえ、どうしても優先度は経済圏や社会圏が優先されやすいというジレンマもあります。



私が地球水族館の活動が魅力だと感じるのは、SDGs的には後回しにされがちな「生物圏」への貢献を通じて、社会圏・経済圏も元気にするコミュニティ活動へと展開しはじめている点です。

まさにそこが地域応援ラジオ番組から自発的に始まったプロジェクトの強みなのではないでしょうか。



終わりに、私が伊方 御所ケ浜ビーチクリーンに参加して嬉しかったことを記しておきます。

それは、地球水族館の仲間と汗をいっぱいかいて充実しただけでなく、地元の食の美味しさもみんなで堪能出来たこと。地元の銘菓(株)うにまんじゅうの田村菓子舗さん、愛南町はなきファームさんからの差し入れ。地元の木嶋水産での新鮮な釜揚げしらす、生ちりめん・・・。(ああ地球満足感)

おかげで何だか身も心も、御所ケ浜の海と気の置けない友達になれたような気がしました。





ゆめのたね放送局  地球水族館が貢献するSDGsゴール


・ゴール12 つくる責任 つかう責任
・ゴール13 気候変動に具体的な対策を
・ゴール14    海の豊かさを守ろう



執筆:幸田リョウ (ゆめのたね放送局アドバイザー/株式会社PARK STARS 代表取締役)



ゆめのたね放送局は、2015年6月の開局から8年で全国12スタジオに広がり、ラジオ番組企画・配信を活かした「人の夢を応援するコミュニティ」も広がりを見せています。この連載【ゆめのたね × SDG】では、コミュニティデザインを専門とする私 幸田リョウの視点を交え、各地に広がる社会貢献の活動をご紹介していきます。ゆめのたねパーソナリティの番組企画・貢献活動にますますご注目いただければ幸いです。