ラジオ放送局 ゆめのたね

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【ゆめのたね × SDGs】高校生ラジオコンテストの取り組み

2024年1月27日


「ラジオ甲子園」〜高校生たちの自己表現が溢れる30分間〜

2022年夏、ゆめのたね放送局 広島スタジオのパーソナリティ有志が企画して始まったラジオ番組制作コンテスト、それが「ゆめのたねラジオ甲子園」です。

一般応募から選ばれた現役の高校生・専門学校生たちがパーソナリティとなり「こんな番組を作って放送してみたい!」という想いを30分間の本格的なインターネットラジオ番組として配信。高校生たち自ら企画し練りに練った番組が、高校球児さながら、真夏にゆめのたね放送局で一般配信されコンテストとして優秀番組を競います。


2022年も新型コロナウィルスの影響はまだまだ色濃く、心身ともにエネルギッシュで多感なティーンネイジャーたちにとっても、学校行事がなくなってしまったり遊びや学びの機会が奪われていました。多くの子たちが難しい時間を過ごしていたはずです。

「こんな時だからこそ大人たちが、高校生たちの自己表現・社会発信できるチャンスづくりをできないか」

広島スタジオパーソナリティ有志の方々のそんな想いから「ゆめのたねラジオ甲子園」は始まりました。

エントリーした高校生・専門学校生には、夏の放送に向けて自身の番組企画をゼロから考えてもらいました。所属パーソナリティは伴走するコーチ役に。番組企画の相談にのったり、時にアドバイスもして寄り添います。そうやって高校生たちの「こんな番組を形にしてみたい」という想いがどんどん膨らんでいきました。

2022年 第1回大会は、広島県内の13チームがエントリーにて開催。多数の企業・個人の皆様の協賛による全面バックアップ、そして教育委員会や新聞社・テレビ局も後援いただき、番組放送、コンテスト表彰式まで盛大に行うことができました。

2023年 第2回大会は、6府県に規模を拡大して各地で開催されました。
(神奈川県・大阪府・広島県・沖縄県では「ゆめのたね甲子園」として、岐阜県・北海道では「高校生ラジオコンテストVOICE」として開催)




高校生たちの番組のこちらの特設サイトからもお聴きいただけます。


多様性って、「壁」を軽やかに飛び越えることなんだ。

私たちの暮らしに突然、新型コロナがやってきた2020年。日本全体が感染対策を余儀なくされました。ソーシャルディスタンス、席を空ける、アクリル板で隔てる、マスクで口を隠す、おしゃべりをやめる・・・物理的なものからコミュニケーションまで、暮らしのあちこちに「壁」が増えていきました。

不思議なもので、四方八方が壁だらけになると、人はあたかもそれが当たり前のような錯覚を起こしてしまいます。そうでなくても日頃から「立派なオトナ」たちは、囲いや関所を作ったり、せっせと権威や利権という見えないアクリル板を作りたがります。「壁を作ることこそが仕事」だと思ってるふしすらあります。

でも、どうでしょう。

コンテストにエントリーした高校生たちの創意工夫と自己表現に溢れたラジオ番組を聴くと、 壁も関所も世代もふわっと飛び越えて、こちらの胸に飛び込んでくるものがありました。


好きなことをスケッチブックに描くように溢れる言葉たち。甘酸っぱいラジオドラマ。留学生から見た日本の魅力。放課後のような息の合った雑談トークショー。揺れ動く「誰でもない自分」を精一杯の声で紡ぐ成長記録。障がいのこともLGBTQのことも、フラットに語りあう平和な時間・・・。
 
「立派なオトナ」たちが、気合と根性で壁にドリルで穴を開けようとしている間に、高校生たちは、世代も国境も価値観の壁も軽やかに飛び越えて、自由な番組を届けてくれました。



この数年の「壁だらけ」になってしまった日常で、時にはもがいて時には笑って掴んだ等身大の未来感覚が、高校生たちの語りに溢れている気がしました。

ダイバーシティ&インクルージョン(多様性と包摂性)が叫ばれて久しいですが、その基礎となるのは「対話」だと言われています。多くの企業が苦労しているのは、ハラスメントをいかに防止し、いかに対話の活発な職場にしていくか。筆者も仕事柄、そういった研修を企業や自治体向けに行っています。

でも、難しいのは対話ではないのです。対話をするための土台となる人と人との「対等性」を作り上げることが実は一番難しい。「対等」とは「壁がない状態」だからです。立派なオトナほど、壁との付き合いに慣れすぎてしまい、何が対等な関係なのか分からなくなりがちです。

趣味も障がいも夢も恋愛も政治も同じ熱量で語り合う。スマホの向こうから流れてくる高校生たちの番組が、不思議とわたしを魅了してくれる気がしました。

多様性の土台である「対等性」を作るには、決して壁を壊さなくてもいい。壁を軽やかに飛び越えてしまえばいいんだ。そんな勇気すら湧いてきたのです。


大人たちの力を思う存分に借りていい。
ラジオ番組づくりから得られる自己表現と自己実現。

魅力的なラジオ番組を作るためには様々な準備が必要です。企画・構成は元より、取材・台本執筆・演出・タイムマネジメント・人権配慮・アドリブトーク・そして第三者に自分の感情や考えをわかりやすく伝えることまで。

自由な自己表現を、多くの人に届ける「自己実現」に昇華するためには、知識も技術も粘り強さも求められます。

ゆめのたね放送局所属のパーソナリティ皆さんは、職業も世代も違えど「自分の夢も人の夢も応援する」という1点において純粋で真剣な方ばかり。そんな大人たちが番組準備に苦戦する高校生たちをサポートしていました。高校生たちは、一流の話し方講師やプロフェッショナルのラジオDJによるオンライン指導を受ける機会もありました。


「本当に表現したい番組のカタチ」が徐々に形になっていくのは、何よりも刺激的な体験です。さらに協賛企業のラジオCMを番組用に自主制作するのもコンテストの一部。楽しみながらも、本気のビジネスセンスを磨く体験学習になっていきました。

夢を描いたら社会の中で自由に自己表現できる楽しさを。
多くの方のサポートを得て、大きな夢が実現できるという自己実現体験を。

気がつけば、ラジオ甲子園は、高校生たちが大人の力・リソースをたっぷり借りながら、自分たちが描く夢の番組づくりにチャレンジする「大人と一緒に作り上げるコンテスト」になっていました。

対等性を育むインターネットラジオだからこそ実現できたダイバーシティ&インクルージョン溢れる番組コンテスト、それが「ゆめのたねラジオ甲子園」だと言えるのではないでしょうか。



もしよければ、高校生たちの番組アーカイブ、あなたも聴いてみてください。

コスパやタイパをつい気にしがちな「立派なオトナ」も、凝り固まった価値観がストレッチされ、誰かと一緒に自己実現したくなってくる。

そんな効用があるはずですよ。


ゆめのたね放送局 高校生ラジオコンテストで貢献するSDGsゴール
・ゴール4   質の高い教育をみんなに
・ゴール5   ジェンダー平等を実現しよう
・ゴール10    人や国の不平等をなくそう
・ゴール16    平和と公正をすべての人に

執筆:幸田リョウ (ゆめのたね放送局アドバイザー/株式会社PARK STARS 代表取締役)

ゆめのたね放送局は、2015年6月の開局から8年で全国12スタジオに広がり、ラジオ番組企画・配信を活かした「人の夢を応援するコミュニティ」も広がりを見せています。この連載【ゆめのたね × SDG】では、コミュニティデザインを専門とする私 幸田リョウの視点を交え、各地に広がる社会貢献の活動をご紹介していきます。ゆめのたねパーソナリティの番組企画・貢献活動にますますご注目いただければ幸いです。